良書とは、単に情報をあたえてくれるだけではなく、読者に自発的に考えさせるきっかけを与えてくれるものだが、その点で、本書は間違いなく優れた著作であるる。
特に、下巻に関しては、アメリカ人に向けて書かれている部分が多いが、例えば、アメリカには無縁の少子高齢化といったキーワードも含めて日本ではどうなのかについては、我々日本人ひとりひとりが考えてゆかなければならない。また、企業やひとりひとりがフラット化の世界の中で、どうのように生きてゆくべきかについても、危機感を持って考えるきっかけを与えてくれる。
以前出版されたものの改訂版だが、その後の新しい情報をかなり加えて大幅に手直しされている。ただ、フラット化は常に現在進行形である。だから、著者が改定増補版を作成している途中及びその出版後もわれわれが考えるべき新しい変化が起きている。たとえばサブプライム・ローン問題は景気後退がフラット化に与える影響を考察する機会になった。また、地球温暖化は可能性から確信に変りつつあるが、今のところフラット化は全体的にはこれを加速する方向により大きく作用しているように見える。また、穀物価格の急騰、原油価格の100ドル超えもフラット化の加速との関係を否定できない。限られた資源の取り合いが激しくなる構図が鮮明になっている。このような点に関しては、さらにより深い考察を必要とする時期に差し掛かっているように思う。
今後、まだまだフラット化が進むのであれば、それによって世界がどうなるのかという結論を下すのはまだ早い。よって、今後も適時改定版が必要となる。ただ、今の編集のやり方だけでは、世界のフラット化のスピードについていくのは難しい点があるかもしれない。たとえば、ネットで世界中の協力者と適時情報を交換し、ソフトウェアのパッチのように適時改訂情報をWebで公開して、ある程度溜まったら次の改訂版として本にする、という思い切ったプロセスを考えても良いかもしれない。