ジョン・L・フリン氏の吸血鬼映像作品紹介書「シネマティック・ヴァンパイヤ」では80年代において「ロスト・ボーイ」と並んで評価が高い作品です。
芸術的な吸血鬼物ではなく、怖さとユーモアと仄かなお色気を兼ね備えた見事なエンターテイメント作品です。
ティーン恋愛コメディとして、古い怪奇映画へのオマージュ作として、当時の最新SFX映画として、素晴らしい曲者俳優クリス・サランドンの実に格好良い吸血鬼を愛でる作品として多様な楽しみ方が出来ます。
ストーリー的には現代の怪奇映画ファンで少々ピュアな少年がいち早く隣人(クリス・サランドン)が吸血鬼で有る事に気付くのですが、悪知恵と世間知に長けた吸血鬼にあしらわれ孤立して行く様子がスリルと共にユーモアたっぷりに描かれて居るのに感心させられます。
主役の如何にも間抜けな少年チャーリー役がピッタリのウィリアム・ラグズデールと、倒錯者から強姦魔、悪の王子から果てはナザレのイエスまで演じた怪優クリス・サランドンとの格の違いを実に上手く使って居ます。
久し振りの再見で、主人公の友人、EVILの明るく振舞って居ても実は吸血鬼に取り込まれるだけの心の闇を持っていた事を感じさせる繊細な演技や、最初は金の為に協力していた落ち目の怪奇映画俳優ピーター・ヴィンセント(ロディ・マクドォール好演)がリアルなヴァンパイヤ・キラーとして劇中成長して行く様や、垢ぬけない高校生だったチャーリーのガールフレンド・エイミーが、吸血鬼になった途端に妖艶かつ怖い美女に変身するなど、役者陣の好演が目立ちます。
劇場公開時には度肝を抜かれたリチャード・エドランドのSFXは今観ても迫力充分。
80年代風俗が懐かしいディスコや学校のシーン、ピーター・ウルフを欠いた全くらしく無いJ.Geils Bandのエンディングに流れる主題歌やDEVOやSPARKSと言った屈折した挿入曲が使われている音楽も面白いです。
以上の好条件もユニバーサルやハマーの吸血鬼フィルム愛に溢れた脚本も兼ねたトム・ホランド監督有っての事でしょう。
実に楽しい作品です。