サム・リバースはマイルス・イン・東京のピンチヒッター・テナーとして人々の記憶に残っているが、その後もContoursなどで新主流派の異才としてその実力を見せつけた。またトニー・ウイリアムスのスプリングやライフタイムでもウエイン・ショーターの向こうを張って実力者の片鱗を見せていたが、その後の活躍がフリー・ジャズよりになった時点で商業的にも遠ざかり、人口に膾炙することもなくなっていった。同じ新主流派でも、ウエイン・ショーターやジョー・ヘンダーソンはポスト・コルトレーンとしてテナーサックスの王道を歩んだ。僕はこのアルバムを聴いてサム・リバースの才能は決してこの二人に劣るものでは無きことを確信した。いたずらにフリーキーに走ることなく抑制され、自らのオリジナルでモードとフリーのイデオムの中間で実にスウインギーにそしてスリリングにソロを展開している。バックを務めるトニー・ウイリアムスとジャキー・バイヤードはともにリバースと同じボストン出身。マイルスコンボにリバースを紹介したのがトニーというからすごい。またベースのロン・カーターは言わずと知れたマイルス・コンボの偉大なるタイムキーパー。このメンバーならサム・リバースの初リーダー作の布陣としては申し分ない。バイヤードもユニークでややフリーなアプローチを随所に見せ興味深い。これがハービー・ハンコックならさらにミステリアスになったかもしれないがこれはこれで良しとしよう。この時期のブルーノートは傑作の宝庫だが、このアルバムはサム・リバースという遅咲きの異才の畢生の傑作として、またブルーノートの良心を伝える名盤として是非手元に置いてほしい一枚である。