いつものとおり、著者の語り口は平易である。
初めに、「建築とは何か」という問いに対し、古いこと、大きいこと、長持ちすること、美しいこと、の4つを挙げる。そしてその4つの総合力により、人間に「懐かしさ」を担保する、記憶の器としての建築という概念が示される。
本書は、ヨーロッパの主として宗教建築の歴史と、日本の住宅の歴史の2部に分かれている。
王権のオブジェとしてのピラミッド、木造建築を石で模すところから始まったギリシャ建築、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロック、新古典主義と来て、一旦西洋建築の「死」を宣告する。
日本の住宅は、竪穴式と高床式の使い分けとそれぞれの発展、貴族のための寝殿造、武士のための書院造、趣味の茶室と数寄屋造までを追う。
つまり、本書の取り扱う範囲は近代建築誕生前までであり、そういう意味でも「入門」となっている。
本書より判型が大きいと思われる他書から引用の解説図がわかりにくいのが難。