1989年10月に初めて世に出た写真集「フクロウ」は、1990年第9回土門拳賞を受賞。10刷2万部を売って廃刊となった。このたび、ハンディ版としてその名作がよみがえった。
「フクロウ」の撮影にあたっては、たくさんの伝説が残っている。宮崎学は自著のいくつかにそのエピソードを書き残しているので、本書の副読本として読んでみるものよい。
人のすぐそばで暮らしていながら、存在を知るのは声だけで、闇夜に沈むその姿を見つけることが難しい鳥。そのフクロウを特設アトリエ「フクロウ谷」に誘導し、巧みなライティングとセンサーによる自動撮影を駆使して撮り上げた、これはフクロウのモデル写真集ともいえる。
もちろん「フクロウ」はフィルムカメラによる撮影である。相手の動きを読み、光を読み、その一瞬をフィルムに焼き付ける。その卓越した技術力によって演出されたフクロウの生き生きした表情は、デジタルカメラの時代になり、撮影の試行錯誤が容易になった今でさえ、他書の追随をまったく許さない。
ハンディ版となってよみがえった名作「フクロウ」は、手に馴染むサイズと質の高い印刷によって新たな魅力を持つことになった。自然界の報道写真家・宮崎学の代表作を、お手軽に楽しむことのできる良書である。