自分の内側の言葉にならない曖昧な感じからのメッセージを少しずつ受け止めていく技法、フォーカシングの創始者自身による、一般向けに書かれた最初の「技法」解説書としての価値は不朽である。
言うまでもなく、フォーカシングに関心を抱く人必読の「第一基本文書」だが、技法の手引きとして、アン・ワイザー・コーネルの「
やさしいフォーカシング―自分でできるこころの処方」をはじめとする様々な実践家による著作で、更なる展開がなされていることを忘れてはならない。
翻訳の水準は、章によって若干ばらつきがあり、重要な語句の翻訳が抜けている場合もある。しかし、技法としてのフォーカシングの用語の「定訳」を定めた功績は大きい。ただ、日本語としてみた場合、現実のトレーニングの現場では日本人にすっと入らない教示の言葉も多く、工夫を要する。
また、この本を読めば、「マニュアル」として、フォーカシング技法をいきなりトレーニングや臨床の現場で使いこなせると誤解してはならない。フォーカシングは「人に対して」するものではなく、まずは自分のために自分で行なうキャリアを必要とする「身体的な」習熟スキルである。いわば、楽器の演奏のようなものであり、本でだけ「指導法」を勉強して、自分で車の運転が自在にできない自動車学校の教官はあり得ないのと同じである。
この点は特に臨床関係者のために注記したい。