“この映画の事を悪く言う人にお目にかかった事がない”、もしくは、“この映画が嫌いな人とは友達になりたくない”。
今作が公開された当時、映画ファンたちの間で交わされていた会話です。そして、この意見に、私も賛同します。
これは、人恋しさと、恋が始まる時のときめきと、ちょっと冒険してみる好奇心と、新たな環境への息苦しさと、相手を想い、愛しコミュニケートする事の切なさと不安と、でもやっぱりその大切さと素晴らしさを謳い上げた物語。
キュートで可笑しくて、何より優しさに溢れた宝箱の如き作品。
「第三の男」で有名なイギリスの重鎮キャロル・リードが、晩年にこんなファニーな小品を撮ったのが驚きでもあり、素敵でもあります。
シャレたラブ・コメディでもありながら、それでいて、ミステリアスなタッチが絶妙な隠し味となっています。脚本は「アマデウス」のピーター・シェイファーですからね、面白いのは当然です。
ミア・ファローの魅力が最大限に生かされた作品、ジョン・バリーの主題歌も良かったなぁ。(実は今作の原題は“The Public Eye”なんだけど、“♪ Follow,Follow ♪”と連呼されるサビのフレーズがあまりに印象的で、誰もが「フォロー・ミー」こそ原題だと思っていました)
映画の世界で生きる人たちの間でもファンが多くて、例えば、周防正行も「シャル・ウィ・ダンス」で、トポルを意識した探偵(柄本明が演じていました)を登場させていました。ご丁寧に探偵の部屋には今作のポスターが貼られていると言う確信犯ぶりでしたね。
多くの映画ファンが待ち望んだ今回の初ソフト化、ロンドンのハイドパーク、ケンジントン・ガーデンを徘徊するファローを思い浮かべながら、同様にハイドパークでロケされていた70年代シチュエーション・コメディの傑作メルヴィン・フランクの「ウィークエンド・ラブ」もいつかDVD化される事を!
(追記)1.今回収録されている1977年「水曜ロードショー」でオン・エアされた際の日本語吹き替え版は、実に素晴らしい。変な言い回しだが、オリジナル音声よりもムードがある(笑)。
日本語版製作スタッフ/キャストの紹介がないので推測だけど、クリストフォル役の石田太郎も、チャールズ役の西沢利明も、実に、そのキャラクターを捉えた吹き替えぶり、ただ、お二人は、それぞれ、ピーター・フォークやロバート・カルプの吹き替えもやられているので、そのやりとりを聴いていると、ちょっと「刑事コロンボ」みたいな部分もあったが(笑)。
ミア・ファローが演じたべリンダ役の吹き替えも良いのだが、誰が吹き替えていたんだろう?分かる方は、ご教示下さい。
2.他のレビュアー諸氏もこぞって述べられているように、今ソフトの解像度は商品パッケージ上のHDリマスターの触れ込み通りの美しさ。ドルビー・デジタルのサウンドも臨場感たっぷりで、100インチ・プロジェクターにかけると、本当に名画座で初見した当時の懐かしさが甦ってきた。