映画『イノセンス』のエンドロールに映し出された日本語訳をまじまじとみつめてしまった。詞の世界の深遠さが映画の精神を象徴しているようで、最後まで目が離せなかったのだ。その美声も同時に内省的で神秘的だった。心がイメージたっぷりに、当に“あの山の奥にある国へ”つれてゆかれそうになる。映画にとってこれ以上望むべくもない音楽なのである。「yomiuri on line」の記事によればジブリ鈴木氏、押井監督共々この曲を聴いてこれしかないと思ったようである。またここでは伊藤君子へのインタビューも入念に行われており、読んでみると歌詞の俯瞰した視点が『宇宙から地球を見つめているような。その視点は「イノセンス」にも通じるところがあると思います。』と述べている。川井氏の編曲についても聴いた瞬間、エンドロールが目に浮かび、とても映画的だと思ったそうだ。『ちゃんと「イノセンス」の「Follow Me」になっていますよね。「攻殻」からの流れである鈴や太鼓の音が、とても自然に入ってきて。』などとある。
さて、焦がれて買ったこの曲。何百回聴いてきたかわからないが、今でも私の効用曲線を高いままに満足させてくれる。特にこのイノセンス版の歌いだしのアカペラを、初めて聴いた時に感じたゾクゾク感の90%は今も達成してくれるのだ。それだけこの歌いだしには音楽の神さまが降りてきている。再生ボタンを押すと、吸い込まれるように最初の一声が霧の彼方から聞こえる。緊張感に張り詰めつつも、その水面下にある豊かな情感を伊藤君子はさすがの表現力でうたう。この瞬間こそこの曲のいのちだと思っていい。
最後に「A SONG FOR YOU」も素晴らしくいい。レオン・ラッセルの原曲、カーペンターズのカヴァー以上の名演ではないか。「My Favorite Things」も然り。原曲を超え尊敬を逸脱しないものこそカヴァーだ。