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フェルメール 光の王国 (翼の王国books)
 
 

フェルメール 光の王国 (翼の王国books) [単行本]

福岡伸一 , 小林廉宜
5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

ヨハネス・フェルメール……17世紀オランダ美術を代表するこの画家は、現存する作品が30数点しかないこと、また窓から差し込むやわらかな光の描写、部屋の中に人物と物を配した緻密な画面設計などの独特の表現で知られ、世界でも極めて人気の高い作家の一人です。フェルメールが画布にとらえた“光のつぶだち”に魅せられた生物学者・福岡伸一が、“フェルメールの作品が所蔵されている美術館に実際におもむいてフェルメールの作品を鑑賞する”をコンセプトに、世界各地の美術館が擁する珠玉のフェルメール作品を4年をかけて巡った『翼の王国』の人気連載の美術紀行が、ついに書籍になりました。その旅先の風土を感じさせる旅情豊かな文章と写真で、あなたを「フェルメールの旅」へ誘います。

内容(「BOOK」データベースより)

生物学者・福岡伸一がおくる極上の美術ミステリー紀行。

登録情報

  • 単行本: 256ページ
  • 出版社: 木楽舎 (2011/8/3)
  • ISBN-10: 4863240406
  • ISBN-13: 978-4863240407
  • 発売日: 2011/8/3
  • 商品の寸法: 21.9 x 15.7 x 2.5 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 16,479位 (本のベストセラーを見る)
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By naichi トップ500レビュアー
光が、音や電波のような振動、というよりはむしろ粒子であることを理論的に予言したのは、ほかならぬアインシュタインである。しかし、アインシュタインに先立つこ300年近く前、すでに光が粒子であることを、確かに認識していた人がいるという。それが、17世紀オランダ美術を代表する画家ヨハネス・フェルメールである。

細部に秩序ある調和として現れている「光のつぶだち」が印象的なフェルメールの作品は、現存するものが37点。世界中に散らばっているフェルメールの作品の展示場所が、本書のインデックスでもある。登場人物は、レーウェンフック、エッシャー、野口英世、ガロア、ライアル・ワトソン、シェーンハイマーなど多士済々。本書は、分子生物学者 福岡伸一が「フェルメールの作品が所属されている美術館に赴いてフェルメールの作品を鑑賞する」というシンプルな原則に則って、思索を巡らせた美術紀行である。

◆本書の目次
第一章 オランダの光を紡ぐ旅
第二章 アメリカの夢
第三章 神々の愛でし人
第四章 輝きのはじまり
第五章 溶かされた界面、動き出した時間
第六章 旅の終焉
第七章 ある仮説

ワシントンの国立美術館の中にある作品『フルートを持つ女』。この絵はほかのフェルメール作品と違って、例外的に、板の上に描かれている。サイズも格段に小さく、意匠も、絵のタッチも、筆遣いも、光の角度もフェルメール的ではない。そのため、多くの研究者がこの絵をフェルメールの真作と認めていないともいう。

その絵に関して、とある学芸員がこのように言う。「絵を見るとき、あなたは何を見ますか。相違する何かを探しますか。それとも相補する何かを探しますか」この台詞が、本書における著者のスタンスを決定付けたかのような印象を受ける。著者はフェルメールの絵画と、自身の専門である科学との間に、相補する何かを見出そうとするのである。

例えば、ルーヴル美術館にある『レースを編む女』。この絵の特徴は、「コンピューターのICチップスの組み換え作業だといわれても納得するような、この絵にみなぎる時代を超えた精密感」というものである。数学的な美しさにも満ちたこの絵は、カメラ・オブスクーラという光学器具を使って、部屋の三次元的構図をキャンパスの二次元平面に正確に写し取られたとされている。フェルメールは、つねに空間の測定と幾何学の実現を企図していたのだ。

ここで、著者の思索は、同じくフランスに生まれた天才数学者ガロアの方へと巡らされる。ガロアは『幾何学言論』を読み、幾何学の建築がギリシア神殿のような単純さと美しさで建立されてゆくのを目の当たりにし、幾何学構造の偉容を理解した人物。フェルメールもガロアも、この世界には、目に見えないながらも、美しい構造があると信じていたという点で、つながっていたのである。

また、著者の専門領域である分子生物学に関する記述も興味深い。著者が好んで使うキーワードに「動的平衡」という言葉がある。私たち生命を外的な環境から隔てているように見える界面が、実は私たちを環境とつなげるためにある、という事実のことである。食べ物の元素は、めまぐるしいほどの高速で、体を構成する元素と交換されており、私たち生物は、絶え間のない流れの中にある元素の淀みにすぎない、そして生命にとっては、つねに変わり続けることが、できるだけ変わらないための唯一の方法であるという生命観だ。

この「動的平衡」という概念を、著者はフェルメールの絵にも見出す。ベルリンに『二人の紳士と女』という絵がある。この絵に描かれている二人の男は、光の当たり方は違うのだが、同じ髪型、服装をしている。著者は、彼らを同一人物ではないかと夢想する。これは推測の域を出ていないのだが、これが事実だとすると、一枚の絵に二つの異なる時間が描かれているということになる。これによって、止められていた時間が再び動き出したということ解釈することができるのだ。絵とその絵を見るものとの界面を溶かし、静かな安定の中にではなく、不自然なまでの流れの中に、ほんとうの自然があるという、実に鮮やかな発見なのである。

このように著者は芸術と科学の間を動的平衡のように行ったり来たりしながら、知的な揺さぶりをかけてくる。そして、やり方こそ違えど、芸術も科学も、いかにありありと世界を記述するかという一点において、その目的は同じなのだということに気が付かされる。我々もまた、変わらないために、変わり続けなければならないのであろう。記述したくなるような世界であり続けるために。
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16 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
福岡ハカセについては、「世界は分けてもわからない」(講談社現代新書)の記述で、「あれ、随分と絵画に薀蓄のある人だ!」と感心した覚えがある。その意味で、今回のフェルメールについての著書もそれほど違和感は無い。(最近も日経で美術に関して連載中!)。

今回は、フェルメールの現存する(とされる)37の作品のうち34を見ることができたそうだ。(残りは、個人所有だったりで現物は見ていない。)これら作品を見るために、訪ねた国は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、アイルランド、オランダ、オーストリア。

まあ、ANAの機内誌の連載としては(これらの国は大半、ANAを使って訪問できるので)ドンピシャというべきか・・。「翼の王国Books」の「光の王国」というのもまあ、そうかな?て感じです。全部行くヒマと金の無い人は、オランダ、デルフトの「フェルメール・センター」に行くと(複製ではあるが)原寸大の絵画が年代順に一覧できるそうです。昔は、デルフト焼きの工房位しか見る場所が無かったけどね・・。

ただし、単なる「美術館訪問記」でなく、十分調べた上で、美術館の研究員や、フェルメールの専門家とも意見を交換しているので、なかなか深く掘り下げられた議論がされている。絵の保存について各美術館の考え方の違いもわかり、興味深い。

「光、刹那の微分」(一瞬の窓からの光を捉える!)の達人の技があったことを思い知らされる。

「第七章 ある仮説」は、「そうかもしれない!!」と説得力がある。読んでのお楽しみ!!ここは、著者は「付記もしくは外伝」とも言っているが・・。(レーウェンフックの言う「熟達の画家」についての謎解きがなされている。)

関連して登場する人々への考察もなかなか示唆に富みますね・・。写真が沢山挿入されているがどれもきれいですばらしい出来になっている。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
美術の本として読むよりは、旅行記として読んだほうが面白く読めるかもしれない。ANAの機内誌への連載のために始まった企画だということを序文に入れてくれたほうが、この本のあり方を読む前に理解できたと思う。著者と美術、あるいはフェルメールとの関わりがどこまで読んでも克明に浮かび上がらず、そのためにこの本をどのように読めばよいかをやや考えあぐねたからだ。フェルメール本としてではなく、フェルメールをめぐる旅の本として読む方が、読後に得ることは多そうだ。
著者の専門である科学の物語にひきつけて語られる部分には、経験に基づく鋭い思索が表れており、他に際立って生き生きと書かれている。学者が常に自分の専門にひきつけて語ることは一般的に忌避される傾向にあるが、この本では逆にその部分が面白みとなっていると感じた。
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