本書は、英国でアドボカシー・ジャーナリズムを展開する著者が、フェア・トレード商品の生
産者やフェア・トレード業者に対して行ったインタビューを基に書かれている。
アプローチは多岐に亘る。国際貿易の理論に始まり、途上国を包含する域内貿易協定、各国の
農業政策、生産者の組織化、そして認証ラベル制度。英文和訳のせいもあるが、フェア・トレー
ドの入門書として読むにはやや難しいと感じた。
著者が力説しているのは、途上国の生産者団体に関してである。自由貿易によって虐げられた
生産者が、協同組合を組織し農地を共有化することや労働組合を組織し交渉をすることで、生産
過程を民主化することができると訴えている。
仮に、フェア・トレードの原則である生産過程の民主化が形骸化した場合は、どうなるのであ
ろうか。「公正さの測り方」という段落で、次のように警鐘を鳴らしている。
「北のフェア・トレード業者にとっては、共通の基準に合意する必要やその基準を強制する必
要に対して、たやすく夢中になりがちである。しかし、最初の段階から南の生産者がプロセスに
関わることがないのであれば、フェア・トレードは、生産者に対する消費者の統制をたんに別の
形で再現したにすぎなくなる。」
フェア・トレード商品が高品質や環境にやさしいなどの付加価値を有するにつれて、途上国の
生産者それぞれの固有の伝統や現状を考慮しない状況が生まれつつあることを危惧しての進言
であろう。
フェア・トレードは、多国籍企業が牛耳る市場経済のニッチではなく、市場経済のあり方に立
ち向かうことを使命としている。このように語る著者の理念は共感できる。
フェア・トレードに関心を持つ全ての人に、自由貿易推進者でもなくフェア・トレード業者で
もない著者を通じて語られる生産者の声に耳を傾けることをお勧めする。