副題に「フェアトレードの基礎知識」とあるように入門編の書籍である。
そういう意味では、少し前に出た「フェアトレード学」とだぶるところがあり、インパクトに欠ける。
本書は多数の著者によって書かれているので、目新しい視点もある半面、研究者と実務者の視点が入り乱れ、読者は混乱するかもしれない。
編者によれば、フェアトレード研究の基盤を提示したかったそうだが、研究の面では、海外の研究者によって行なわれ英語で発表された既存研究の「粗い」レビューに終始しており、すでにこの分野をかじっている読者には物足りないだろう。
(以下、「はじめに」より抜粋)
「・・・これまで日本で発行されたフェアトレード関連の書籍はどうしても啓発書や事例集が多いので、この分野を研究しようとする人にとっては、・・・(中略)・・・何が基本概念かを理解することが難しかった。」
つまり、日本語しか読めない研究者(?)を助けるためにこの本を出したように思えるのだが、となると、学部の卒論を書く人に向けて発信しているのだろうか。
いわゆる欧米の社会科学を日本に紹介するという従来のパターンを出ていないのが残念である。
独自の研究としては、ベリーズのカカオ、マラウイの紅茶の事例研究が含まれているが、紙面の制約のせいなのか、現状報告にとどまっており、理論的な貢献にまでは至っていない。
情報量は多いものの、消化不良を感じてしまった本である。