英国出身、新世代メタルの旗手、BFMVの3rd。
ドン・ギルモアをプロデューサーに迎えたことで、楽曲がコンパクトにまとまり、80年代ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル譲りの様式美や疾走感はやや減退。ツイン・リードの絡みは依然メイデン的だが、展開がシンプルで、前作よりもややテンポを落とした楽曲も多く、あくまでボーカル・メロディをしっかりと聴かせる作風。よりアメリカナイズされた印象を受けるが、ボーカル・アレンジは流石ドン・ギルモアだけあって格段に向上している。扁桃腺の摘出手術後で前作中、唯一、不満の残ったボーカル・パフォーマンスも、今回は自信が漲る圧巻の出来栄え。マット・タックの揺るぎない意志の強さには脱帽だ。しかし、その分バッキングが歌を支える場面も多くなり、リフ・オリエンテッドな魅力は幾分、減っている。
しかも前作までは、硬質な音作りが得意なコリン・リチャードソンのプロデュース。ピッキングのニュアンスまで音から伝わってきたが、何せ今回はヘヴィ・ロックの立役者でもある、あのドン・ギルモア。バッキング・ギターのEQをやや低めにして、ボーカルを真ん中で際立たせる音作りで、依然、メタルの範疇で語られる音ではあるが、前作ほど、ギターのエッジは立っていない。ギターの録り方においては、ドン・ギルモアとマット・タックとの間でギリギリのせめぎ合いがあったようだが、結果的に心配していたほど悪いバランスにはなっていない。メタル耳の人には、物足りなさがあるかもしれないが、パフォーマンスというより、あくまで聴かせ方の違いだ。ボーナス・トラック3曲はコリン・リチャードソンのプロデュースゆえ、音の違いを聞き比べてみるのも面白い。(前作発表後の音源であるボーナス・トラックの出来もいいね。)
賛否両論あるが、この新譜には、アリーナ・ロックを目指すBFMVの行き着いた音が集約されている。離れていくコアなファンよりも、さらに多くのリスナーを獲得する可能性を秘めたアルバムだ。BFMVのキャリア上での、メタリカ『ブラック・アルバム』的な意味合いを持つ作品とも言える。
個人的には、「良い楽曲」という点において、BFMVブランドを確立したアルバムだと思う。