大変な掘り出しものである! 冷静かつ多方面に渡る観察は貴重だ。特にフィンランドが失業率20%という過酷な不況から短期で立ち直った過程を描いた第1章は必読である。当時のフィンランド政府は迅速に金融機関の不良債権を処理した後、IT産業に集中投資する一方で道路関連など歳出を絞り込み、教育と人材育成に注力したのである。日本が成長率で逆転されたのも至極当然と言えよう。
「政治家の役割は、国がいかに危機に瀕しているかを国民に知らせ、それを克服するためには大きな変化、痛みが必要なことを分かってもらえるように説き、状況を判断し最も相応しい決断を迅速に行うことだ」と、当時の閣僚の言葉が引用されている。日本の政治家の言説と比較して、いかがだろうか。
印象に残るのはフィンランド教育の実態で、1クラスが25人以下でしかもアシスタントやボランティアも多く、かなりの予算をかけていることが分かる。真似できないと思ったのは「教師は国民のろうそく、暗闇に明かりを照らし人々を導く」とする意識で、彼我の隔たりには驚くばかりだ。常に問題意識を求められる教員の質も高いに違いない。地域や学校への権限委譲が進んでいるのも特筆される。
類書との違いとして、フィンランドの失業率が高く、意外に学歴社会である(だからこそ勉強熱心になる)ことを指摘した点が挙げられる。教育関係者へのヒアリングを主軸に構成した研究者の著作では全く触れていないところだ。
競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書)その他、フィンランドの徹底した合理主義には学ぶところが多かった。日本人を「決断が遅い」「要求が多い」「何を言っているのか分からない」としたフィンランド人の日本評には爆笑させてもらった。(多いですよね、こういう人)