本書は、フィンランドの基礎学校教諭を10年間勤めてこられた著者(現在は日本在住)
に、フィンランドの教育全般についてインタビューしたものをまとめた本である。
現在、「学力世界一」や「フィンランドメソッド」と呼ばれ、日本教育界でも注目
されているフィンランドで実際に現場教師として働いてこられた方の考え方にふれ
られるという点では貴重であるといえる。
しかしである。本書は、はっきり言えば、著者の経験に基づく教育観を綴った
エッセイというかたちからは出ていない。
翻って、本書の副題は「なぜ、PISAで学力世界一になったのか」である。この興味深い
テーマに答えるためには、PISAというものがどういうもので、著者の教育とどう結びつく
かという記述が当然求められるが、そのような記述は皆無である。
また、タイトルである「フィンランドの教育力」というのも疑問である。
なぜなら、本書はあくまで著者個人の考え方を綴ったという域を出ておらず、そこから
フィンランドの教育力へと敷衍し一般化させるための、データや引用も根拠も全く示して
いない。タイトルと内容の乖離があることは否めない。
そして、「フィンランドの教師だからというだけで素晴らしい」ということはない、と
認識して冷静に読み進める必要性があるだろう。これは、決して著者を批判している
わけでないが、本書のタイトルで出版するだけの内容には至っていないと言わざるを得ない。
教職経験10年といえど、著者の行っていらっしゃった教育実践は、私には特に真新しく
感じることもなかったし、もっと素晴らしい実践を行っている日本人教師はたくさんいらっ
しゃるし、もっと豊かな教育経験をお持ちの方もいらっしゃる。
また、フィンランドのことを語るのであれば、(著者の個人的主観ではなく)もっと全体像
が分かる根拠が欲しかった、といのが正直なところである。