本書は、架空の書物や地図、架空の機械の解説書やパッケージなどを創作するユニット「クラフト・エヴィング商會」の物語作者である吉田篤弘が、正体を明かして書く初の本格的な小説である。ジョン・レノンを待たせた男、巨大な白鯨の幻想に捕らわれた詩人、レインコート博物館に住む奇妙な一家の話に、テイクアウトのピザに初めて外国を感じた10歳の私の物語。ビートルズの「ホワイトアルバム」をカギに、いつしかひとつの物語へと連なっていく16の短編は、どこまでが虚構の世界で、どこまでが現実なのか、その境界があやふやになる不思議な感覚へと私たちを導いてくれる。
本の帯とカバーとをはずすと、そこに現れる表紙は、ホワイトアルバムさながらに白い。著者自身の手による装丁までもがそんな遊び心にあふれた本書は、謎めいていて、どこかなつかしい。(小山由子)
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世界の果てにある食堂の物語を書きたいのになかなか書けない作家「私」を
この本の主人公と据えているが、「私」の登場するシーンはあまり多くない。
代わりに短編ごとに主役が存在し、短編ごとに不思議な物語が語られる。
紙の余白を見つけると何か書きなくなってしまう作家の物語「白鯨詩人」。
ドアノブだけを展示する奇妙な展覧会「ジュールズ・バーンの話のしっぽ」。
映画ではなく映画の予告編を作る仕事に就くことを夢見る学生「ろくろく」。
市民全員のレインコートを展示する博物館で働く「小さなFB」。
他にも笑ってしまう話、懐かしくなる物語、穏やかな気持ちになる物語など
たった1冊の本が読者を様々な想いへと導いてくれます。
休日にあったかい飲み物とお菓子を用意して、読んでみてはいかがでしょう。
肩の疲れがちょっと和らいだような気になれるかもしれません。
私のオススメは「キリントン先生」「ビザを水平に持って還った話」。
16編の短編はどれもビートルズのホワイトアルバムというキーアイテムでひっそり繋がっていて、
クラフト・エヴィング商會の本と同様、細部のいろいろにも丁寧にこだわって、
不思議で静かで淡々としていてかわいらしいお話。
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