『イタリアものしり紀行』の本のフィレンツェのページで本書が紹介されていたので買ったが、「とんぼの本」のシリーズなのでカラー写真が満載であり、ページを開くのが楽しい。書名の通り、フィレンツェの町を散策しながら、この大聖堂の中にはこんな絵画があり、隣の部屋にはこのような絵がある、そしてその隣の礼拝堂の入り口にはこんな彫刻を見ることができ、その中にはこんな絵がかかっている、という調子でカラー写真と説明文が載っているので、本書の冒頭にあるフィレンツェのイラスト地図を見ながら、実際に散策している気分で美術作品を楽しく鑑賞できるし、町の地理にも詳しくなる。大聖堂や美術館や橋や川の写真を見たら、この町のどこから撮った写真であるか、その建物のそばには何があるか、この礼拝堂の右手の奥にはあの橋があるはずだ、というようなこともわかってくる。
説明文が詳しくて、各展示室の見取り図も載っており、その展示室にはそれぞれ何があるのか、こと細かく書いてあるのだが、肝心の写真が載っていないものが少なくない。実際にフィレンツェで美術散歩をするときには、この本に写真が載っていなくても、そこへ行けば現物があるのだから、本書は良いガイドブックになるだろうが、この本だけで「美術散歩」をするには現物の写真がないのは大きな欠点である。百聞は一見に如かず、なのだから。
また、説明文と写真とが同じページあるいは見開きの隣のページに載っていることが少ないために、ページをめくったり戻ったりしないことには、説明文とそれに対応する現物の写真を見ることができない。これは不便である。詰め込み過ぎが原因であろうが、もう少しレイアウトを工夫できなかったのだろうか。
ミケランジェロ広場から眺めたフィレンツェの町並みの写真は、昼間のものと夜間の撮影のものが載っている。数百年前のフィレンツェの遠景のスケッチも載っているが、現在の町並みとほとんど変わっていないことに驚嘆する(実際に暮らしている人は、大いに不便を感じているのかも知れないが)。 上述のような欠点はあるが、写真がすばらしく、というか、それは現物がすばらしいからであるが、フィレンツェの美術作品への関心がますます深まる本である。