80年代のサイモン&ガーファンクルと評されたギリシャの双生児デュオの1stにして唯一のアルバム(85年作)。 80年代のS&Gと呼ばれることを、本人たちはあまり好意的には受け取っていなかったようだが、その繊細なアコースティックサウンドと端麗なハーモニーを聴くと、なるほどプレスはそう呼びたくもなると思わせるだけのものがある。というのも、80年代に流行したいわゆるネオアコ(日本独自の呼び方ではあるが)の流れとは、幾分違うもっとオーソドックスな雰囲気が醸しだされているからだ。ネオアコが、多少なりともポストパンク的な色合いを持っていたのに対し、ギリシャ出身の彼らは、純粋にメロディやハーモニーの美しい音楽を描き出そうとしていたように感じる。であるから、奇をてらった感じのアレンジや展開は一切ない。一口にネオアコバンドと言っても、ニューウェイヴ系の音に近いバンドから、スティーリー・ダン・チルドレンとも呼ばれる珍しいコードや転調を繰り返す高度な音楽性を持ったバンドまで、さまざまであったが、このムーヴメントのネオ(新しい)と呼ばれた由縁の部分は、彼らからは感じ取ることはできない。だからといって、彼らの音楽が古臭いものであるかというと、そうではなく、最初から普遍性を持ち得たエバーグリーンな作品集になっていると断言できる。またサイモン&ガーファンクルとの類似性については、あくまでも端正なアコースティックサウンドとコーラスのことであって、彼らのほうが、より湿り気のない爽やかな音楽性だといえる。春の麗らかな日差しが降りる中、洗濯物が風にそよそよと揺れているような清潔感があり、このカラッとした音楽性は、やはり地中海からの風が気持ち良さそうなギリシャならではなのかな、などと思ってしまう。これはつまり、ネオアコファンにだけ限定してオススメするというような音楽ではなく、誰が聴いても気持ちよく、心に爽涼とした一筋の風が吹いてくるような音楽だと思う。