イラクのまさに「最凶の戦場」で何が起きていた(いる?)のか、本文と、多くを著者自らが撮影したという巻頭の写真が、まず目を引きます。
軍の上層部の政治的な思惑や、国際関係から生ずる不条理に振り回されながら、いくら大義名分があっても最終的には生き残ってなんぼのはずが、そうした大義に尊い命を落としていく最前線の兵士が、いかに難しいゲリラ戦(国防、或いは民族意識などがあるのでしょうが、米軍から見ればもう武器を手にしてゲーム感覚で襲撃をする地元住民とそれを扇動する人たちとの戦闘)を戦い、少なからぬ有為の若者が悲惨な最期を遂げる描写には胸が痛みます。
一見淡々として、惨劇をつぶさに伝える描写には敬服するばかりです。訳文にもそうした緊迫感がよく表れ、すばらしいです。迎え撃つアメリカ兵の視点で描いたゲリラ戦記として価値の高い書であろうと感じます。もちろん、イラク人の視点、あるいは中立的な視点の書物が出ないと、本当に理解できない部分はそのままになってしまうのでしょうが。
あえて惜しい点があるとすれば、部隊の編成表を常に手許においていないと話が混乱する(同じ早川書房から出ている「遥かなる橋(=遠すぎた橋)」や「ブラックホークダウン」に見られるような)点、そして訳者が軍事用語に十分には詳しくないのか、指揮官の職名や用語にところどころ読み替えが必要な部分があるところでしょうか。ただ、いずれにしてもそんなのは微々たる物で内容的な価値を損なうものではありません。
テロの恐怖が身近にある現代、また、日本がそうした危機と直面しうる時代に、平和=戦争を語らぬことと思い込み、いわゆる「正規戦」の危険すら忘れ、さらに凄惨であろうゲリラ戦について想像もつかない我々日本人が一度は読むべき本だと個人的には思います。