筆者によれば、「本書は市民社会が生まれ今の洋服がはじまったこれまでの歴史を、
ファッションが変わるポイントごとに記した」。
ルイ=ナポレオンの激動冷めやらぬ1853年のフランスにはじまり、日常性への帰着ゆえに
「スーパーマーケットのようだ」とときに酷評されるに至る1991年までが本書の射程。
華の都パリを中心に、社会情勢の変化や周辺文化の風景とともに、モードファッションが
いかなる変遷をたどりつつ現在のシーンに至ったのか、を概説する。
結局、盛り込むべき情報が多すぎるがゆえに、かえって何も伝えることができなかった、と
いうのが私の読後の第一印象。
各々の時代とファッション、他の文化芸術とファッションの交差、女性のライフスタイルと
ファッション、階級制度の変化とファッション……いずれを取っても非常に興味深いテーマに
違いないのだが、欲張りすぎたのだろうか、それらを限られた紙幅の中に盛り込もうとした末に、
どのテーマについてもあまりに断片的にしか語れていない。羅列される固有名詞にしても、
なぜに彼らが取り上げられねばならないのか、というコンテクストの貧弱ゆえに虚しく響く。
書き手の日本語も非常にもっさりとして、ファッションの洗練や瀟洒、華麗とは程遠い。