主な登場人物は主人公の「森・父」と「光・父」と陰の主人公障害児"光"。"光"は無論、大江の子息の事であり、「個人的な体験」に続き、個人的な家庭環境に依存した小説である。私は作者の個人的な問題を小説に持ち込むこのような手法は好まない。
「森・父」はゴーストライターとして、彼自身の体験を書くように「光・父」に依頼する。この設定は意味が取りずらいが、大江が大江自身に体験記を書けと言っているとしか受け取れない。
「森・父」は原子力関係の仕事に就いていた時、放射能に汚染された経験を持っており、その関係で反体制グループと連絡を持っている。更に、その女性リーダーと不倫の関係にある。妻はこの関係に気がついている。この後、お助けマンとして宇宙人が登場したりして、体制運動の混乱が描かれる。後半のキーワードは"転換"である。思想転換でもあり、"光"の再生でもある。ただし、作者の頭の中だけで成立しているようなストーリーであり、読む方は首尾一貫した意向を汲み取れない。文章中に、「ha, ha, ha」とか作者の自己満足的な言辞を交えるのも見苦しい。
結局読み通して見ると、転換(デングリ返し)が起こって、何とか"光"が再生するのを期待した小説としか思えない。冒頭でも述べたように、作者の家庭環境・個人的願望を公の小説として発表するこのスタイルはとても賛同できない。