脳学者である茂木氏の本、しかも“脳”というキーワードが入っているため、よくある効率の良い脳の使い方の本かと思ってしまうがさにあらず。“脳は逆境の中でそのポテンシャルをフル稼働させる”というのが一貫したテーマではあるのだが、実際は茂木氏の信条、人生哲学を語った本である。実用的な脳の話を期待する向きは失望するだろう。
では、人生哲学本としてはどうなのか?これが非常に面白い。茂木氏は、自分の生きる学問の世界を含めて、閉じられた社会として発展してきてしまった日本とそこで生きる日本人が、押し寄せるグローバル化の波にどう対応し、どう生きていくべきかを切々と語り、その解決は“ピンチに飛び込んでいく事しかない”と結論づける。
それも、一般的な啓発本のように、危機感を煽りただ頑張れと鼓舞するのではなく、脳科学を背景に理路整然と逆境に飛び込む事の有意性を説いていて、中々説得力あり。日本ではトップクラスの学者である茂木氏が、グローバル化の波の中で何とか世界に踏み込もうとする努力と焦燥感もひしひしと伝わってきて、アカデミックな世界の現状を知る事もできる。
ただ、繰り返しになるけれど、あくまで茂木氏の信条を語った本なので人によって受け止め方は様々だろう。進化・成長が絶対の善という訳ではないし。背中を一押しされたい人には買い。