写真部門が創設された1942年から昨年2011年までにピュリツァー賞を受賞したすべての写真作品を掲載した一冊です。
「硫黄島の星条旗」、「浅沼稲次郎 暗殺」、「オズワルド殺害」、「ナパーム弾から逃げる裸のベトナム少女」など、どこかで一度は目にしたことのある高名な報道写真がまず目を引きます。ベトナムで川を泳ぐ家族を沢田教一が撮った「爆撃からの逃走」も掲載されています。
被写体のかかえるテーマは、戦争や疾病、殺人や憎悪、差別や貧困など、人類を苦しめる事象が大半です。わずかに家族の再会やスポーツの祭典など、希望と感喜をテーマにした写真が含まれていて、そうした写真には安堵と感動を素直に覚えることができます。
それぞれの写真作品に付された文章は、写真を殺すことのない、抑えた簡潔な筆致で、被写体である事象の背景と、その撮影者の苦悩とを伝えています。死の恐怖と背中合わせであったり、被写体の痛ましい末路に心を折られる思いをしたりする多くのカメラマンたち。彼らが生み出す写真が私たちの心を深くえぐるように、カメラマンたちの心をもまた深くえぐられていたことが良くわかります。
受賞は確かに名誉なことですが、賞取りレースに積極果敢に乗り出す意図をもって被写体にのぞむカメラマンはいません。何かを伝えたい。世界を変えたい。そういう思いでファインダーをのぞく彼らにとって、受賞が世間からのやっかみや疑念を生む契機になることもまた、悲しい現実としてあるようです。
なお、個人的に私は、2003年に「エンリケの旅」の写真が特集部門で選出されていたことを知って驚きました。
ルポルタージュ『
Enrique's Journey』が特集記事部門で受賞を果たしていたことは、この本を読んだときに知っていましたが、写真も同時に選ばれていたことは知りませんでした。