本書はピタゴラスの定理を出発点に、読者をアインシュタインの相対性原理まで導こうとするもの。題名に「ピタゴラスの定理でわかる」とあるが、もう少し上の高校レベルの知識がないと読み進めるのはキツイ。基本的に厳密な証明よりも、読者に対して数学に対する夢とロマンを与えようとする意図が感じられる。
まずはピタゴラス(教団)の話から始まり、まだ代数学がない時代に幾何学の理論を築いたユークリッドの功績が紹介される。ユークリッドが用いた5つの公準のうち、平行線に関する問題が「永久問題」として未解決のまま残る点が、その後に影響する。その後、地球のような球面を対象にした球面幾何の話題になるが、球面幾何上でも形を変えたピタゴラスの定理が成立する事が示される。そして、ガウスが複素平面を導入した事によって非ユークリッド幾何の展望が開けてくる。"クラインの壷"で有名なクラインは、ユークリッド幾何が合同変換で不変な図形の性質を扱った学問だと看破する。そして、ポアンカレの双曲幾何(非ユークリッド幾何)によって永久問題が解決される。ユークリッドから2100年後の事である。当時、だまし絵で有名なエッシャーがカンパスに無限を描こうとして、曼荼羅に至ったという挿話は面白い。そして遂にアインシュタインの登場。時間tが観測者によって不変と言う点に疑問を抱き、"光速こそ不変"との閃きから相対性理論が生まれる。それまでの空間だけの理論に時間を加え、文字通り時空の理論を展開したのだ。
極端に難しい数式を使わず、場合によって直感的に話を進めるやり方は本書では成功していると思う。数学者(物理学者)達の挫折と成功の歴史としても楽しめる。ピタゴラスの定理から始まり、夢とロマンを感じさせながら相対性理論まで導いてくれる良書。