「ばらの騎士」でゾフィーを歌い、華やかなステージに立つ森さんとは対照的な宗教曲ばかりのアルバムだが、実はこれこそ森さんの念願だったという。モーツァルトのモテット「踊れ喜べ幸いなる魂よ」や「ハ短調ミサ」、ハイドンの「天地創造」など全てにおいて、森さんはいつものように高度な技術を駆使して、完璧な演奏を聴かせてくれるが、技巧を前面に押し出すことがない、精神的に成熟した大人向けの演奏である。森さんは世の様々な不幸に遭った人々への「祈り」の気持を込めてこれらの曲を歌った、と自ら書いている。それが、聴く者の魂を慰めてくれるのだ。あたかも「音楽に抱きしめられ」るかのように。金聖響氏とオーケストラアンサンブル金沢の伴奏も出過ぎず、引っ込みすぎず、絶妙なバランスである。素晴らしい。