若きBilly Joelを形容する言葉として、最も相応しい言葉が"Piano Man"なのだろう。何かこの言葉の響きには、これまで彼が培ってきた全てが込められているような気がする。さすらいの日々、なかなか陽の目を見ないアーティストとしての活動、様々な苦難と葛藤の日々を支えてきたのは、彼の指であり、腕であり、"Piano Man"としての自信だったのではないだろうか?と僕はこのアルバムを聴いて感じた。
Billy Joelのファーストアルバムは"Cold Spring Harbor"というアルバムではあるが、CBSに移籍後に発売された、このアルバムこそが実質上、彼の音楽家としてのスタートであるように思う。オープニングナンバー"Travelin' Prayer"は丁度このアルバムが、アメリカ西海岸にて制作された事もあり、カントリー調のギターが入り少しびっくりしたけれど、どの曲も後のBilly Joelに繋がるピアノを基調とした、ポップロックテイスト溢れる作品だ。勿論ハイライトはタイトルソングでもある"Piano Man"であるように思うが、他にも"If I Only Had The Words (To Tell You)"や"Somewhere Along The Line"といった甘酸っぱさを感じるバラードは隠れた名曲であるように思う。他にも"Stop In Nevada"や"The Ballad Of Billy The Kid"等という風景が浮かぶ、彼らしいストーリーテーリングの妙の冴えた楽曲も収録されている。
この"Piano Man"をきっかけに立て続けにヒット作を出し、ポップアーティストとしての地位を確立していく事になる彼であるけれど、彼の作品の中では、僕の中ではこのアルバムが一番のフェイバリットとなっている。あまりにも素で洗練されていないこの作品を聴いていると、若い彼の夢や野望、そして苦労やチャンスを絶対にモノにして見せるという意気込みが伝わってくる。それは、僕の勝手なBillyに対する理想像なのかもしれないけれど、ここまで心の琴線に触れた作品は他に類を見ない。