ルドルフ・ゼルキン84歳と半年の時の映像。おそらく、グラモフォンの録音盤のCDで発売されている演奏のDVD版だと思う。スタインウェイピアノをしっかりした奏法で、ベートーヴェン最後の3曲のソナタをじっくりと聴かせてくれる。そもそも、ゼルキンの演奏は、比較的速めのテンポながら、スケールが大きく重厚さも持った何物にもかえがたい味わいで、それこそが、シュナーベルの演奏にもうかがえるようなウィーンの伝統なのであろうか。ただし、ゼルキンの60年代に録音されているCBS盤のCD(レコード)の演奏でこの3曲は聴いていないので、他のソナタや協奏曲を聴いた上での比較である。私にはこの演奏に深く感動している。たっぷりした響きをも大切にした演奏なため、耳だけでなく、全身で音楽を感じられるのである。不思議なものである。もちろん、1987年の録音なので、音もクリアーかつ豊かである。こういういい音質でゼルキンの演奏が聴きながら見られることを素直に喜びたい。31番や32番だと、疲れが見えて、演奏の乱れが感じられなくもないが、それこそが、芸術の醍醐味ではなかろうか。そうはいっても、やはり元気である。激しい奏法である。曲の表現は曲にそったもの、といえるだろう。
文句なしに☆5つである。