弾き手の身体から作品を眺めると何が見えるのか,を前半に,超絶技巧のおもしろさ,を後半に,あっさりと紹介した一冊。
弾く指の,身体の,特性もまた,作品を構成する重大な要素だという観点から,いくつかの作品を読み直している。しかし,観点の紹介に重きをおいており,作品理解に深い何かがもたらされるところまでのものではない。特に,その観点は,作品の構造との関係,作曲者の意図との関係を見るにとどまっており,それらは弾けば気づきうる程度の言及が多く,ピアノ弾き同士で「あるある」と言い合っているだけの感を残した。ただし,諸学との交流を通じるなどして,どんどん面白い話に展開できる分野であることは十分に実感できた。
後半のヴィルトゥオーゾ論は,言及されている演奏を思いながら読めば,ウヒョヒョヒョと笑い転げながら読めるもの。超絶技巧の楽しさを存分に語っている。
ただ,(ハイフィンガー論での浅すぎる歴史観なども含め)こんなことばかり読んでいると,身近な社会問題を眼前にすると,それがどうしたというのだろう。。。と思わずにはいられないほど,音楽の内へ内へと,ちょっと篭りすぎのように思える一冊ではありました。