作品中これでもかという程ちりばめられた暗喩、詩、比喩表現が、ヨーロッパの移民問題も抱えたオーストリアの時代背景と世界最高峰の音楽教育に身を置いた経験の著者とのどぎつい感性が合い余り、日本文は意訳しなければテンポとリズムが保てないように思われた。しかし我慢して読み進むうちに、後半部のここを書きたかったがためのディテールだったのかと、はっきりと解る切ない箇所があり、そこで読者は驚愕させられる。流儀は違えど、どの国の母娘も一度は思い当たるふしのある、根源的に魂を揺さぶる母娘の関係性を突きつけられるのだ。またヨーロッパの抱えるエロスの深遠さが、著者の趣向を超えて伝わってくる。普遍的には閉経するまで産める娘の性的な突き上げの衝動の哀しさを物語っていて、後半部に向ってドライに破状せざる得ない母娘がいかにもヨーロッパっぽく、音楽教育を介しているので独特ではあるが、ヨーロッパの母子家庭の抱える問題がえぐり出されている。読みづらくはあるが読め通せば舌を巻いてしまうほどに圧巻。女性としていつまでも心に残る作品。