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ピアニストが見たピアニスト―名演奏家の秘密とは (中公文庫)
 
 

ピアニストが見たピアニスト―名演奏家の秘密とは (中公文庫) [文庫]

青柳 いづみこ
5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 980 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワ、バルビゼ、ハイドシェック。二十世紀の演奏史を彩る六人のピアニストの隠れた本質を、鋭い観察と筆致で、鮮やかに解き明かす。同じピアニストとしての共感と洞察力ゆえにせまり得た、名演奏家の技と心の秘密。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

青柳 いづみこ
ピアニスト・文筆家。安川加壽子、ピエール・バルゼビの両氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業。東京芸術大学大学院博士課程修了。1989年、論文「ドビュッシーと世紀末の美学」により、フランス音楽の分野で初の学術博士号を受ける。90年、文化庁芸術祭賞受賞。演奏と執筆を両立させ、著書には『翼のはえた指―評伝安川加壽子』(吉田秀和賞)、『青柳瑞穂の生涯』(日本エッセイストクラブ賞)、『六本指のゴルトベルク』(講談社エッセイ賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 348ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2010/01)
  • ISBN-10: 4122052696
  • ISBN-13: 978-4122052697
  • 発売日: 2010/01
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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14 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
『ドビュッシー〜想念のエクトプラズム』にも感銘を受けたが、本書も面白い!

リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワ、著者の師匠ピエール・バルビゼ、ハイドシェックに就いてのピアニスト青柳いづみこが見たピアニスト論であり、印象記、エピソードに関するエッセイ、演奏論にもなっている。この多面性が著者の持ち味であり、批評家でもなく音楽学者でもないが、その素養をも十二分に併せ持った現役演奏者による音楽論と言えよう。これが面白くないわけがない。

やはり、リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチの“超大物”3人の項が白眉だ。リヒテルとミケランジェリに就いては、評者はよいリスナーとは言えないが、本書を読んでみてもう一度虚心坦懐に聴きなおしてみようと思わせた。特にリヒテルだ。

リヒテルは不遇のヴェデルニコフの演奏を十二分に評価して、彼の不遇に心を痛めていたのだという。この一節に触れるだけでも、リヒテルを改めて聴きなおそうと思わせるではないか。

リヒテルとヴェデルニコフはともにネイガウス門下の俊秀と謳われていたが、周知の通り、リヒテルは本国ソ連でも西側でも“カリスマ”視されていた。
片やヴェデルニコフは西側での演奏を禁じられ、そのキャリアはほぼソ連圏内に限られていたようだ。ヴェデルニコフの経歴に就いては、いまやあまり店頭でも見かけなくなった彼のディスクのライナーノーツを読んで欲しい。まことにまことに痛ましく、ここにソ連下の藝術家(知識人)の“悲劇”の典型を見ることもできる。ショスタコーヴィチ、バフチン、メイエルホリド、トカチェフスキーなど“様々な悲劇”のなかのひとつとして。

青柳はあくまでそうした悲劇には直截的には触れていないが、他方リヒテルのほうにはどういう処世があったのだろうか? いくつか翻訳も出ている彼の伝記や評論、自伝的なインタビュー等も読みたくなった。

ミケランジェリに青柳は「イリュージョニスト」を冠しているが(引田天功?)、リヒテル同様にそのライブに接し得なかった者としては、次の一節に深い印象を受けた。やはりこうした雰囲気だったのか。

<「黒い衣装を身につけた彼が舞台の上にあらわれると、聴衆は一瞬戦慄する」
三千人の聴衆が、一瞬にして支配されてしまう。自分のことを考えられなくなる。>(P52)

「自分のことを考えられなくなる」は見事な表現だと思う。リヒテル同様にミケランジェリも神格化されているが、評者にはよくわからない。ともあれ、聴衆を一瞬にして惹き付ける存在感には超絶的なものがあったのだろう。
そういうピアニストや演奏家はいまや死滅してしまったのではないだろうか?
青柳が紹介しているライブ盤を聴きたくなってくる。

アルゲリッチの項では、かの天才もいろんな苦労をしているのだなあということが書いてあって、極めて興味深い。ここで青柳はグールドとは正反対の演奏者の苦悩を描いているのだ。

全体的には細部にもう少し突っ込んで書いて欲しいところもあったが、大いに読ませるので思い切って星5つ献上したい。
このレビューは参考になりましたか?
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
同じピアニストなだけあって鋭い!
聞くだけの評論家では分からない「演奏(家)の秘密」をたくさん教えてくれる
6人の中で好きなピアニストいるなら決して買って損はしない
個人的にはミケランジェリとアルゲリッチが特に面白かった
グールドとかも続編でやってほしいな。グールド評は溢れかえってるけどピアニストから見たグールドってたぶんあまりないと思うから
このレビューは参考になりましたか?
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By cure 殿堂入りレビュアー トップ10レビュアー
形式:文庫|Amazonが確認した購入
自らもピアニストとして活動する著者が、6人のピアニストの名演奏の裏側に隠された逸話と、演奏への姿勢を同業者の
視点で切り込んだもの。私的に思い入れあるピアニストの大家が複数含まれ興味をそそられたこと、また著者自身が同
業者ということで、一般的な音楽家の伝記とは違ったアプローチを期待して購入したが、期待に沿う内容であった。

本著は単なる彼らの伝記にならないよう留意され、彼らの名演奏の秘密を彼らの身体的特徴、生立ちといった環境の双
方から分析しているのが特徴。性別・身長・鍵盤に対し置かれる椅子の高さ・手の置き方と打鍵法等数多の要素を総合
し分析した記述は、演奏家かつ教育者としての一面も持つ著者の観察眼の鋭さが感じられる。
バイオグラフィー的な部分では、彼らにゆかりの深い人々の証言や各種資料を絡め、彼らの演奏活動の裏側に隠された
人間性や葛藤を浮き彫りにするが、それらの記述は彼らの名誉を傷つけるものではない。暗譜、ステージへの歩み、ミス
・タッチ…こういったものに向けられる巨人達の尋常ならぬ恐怖心は、ピアノを嗜む者なら誰でも共感し得るものである。

個人的に最も印象深いのがミケランジェリの章。どこまでもミス・タッチの無い完璧さと、およそ生身の人の気配を感じさせ
ない透明さを備えた彼のドビュッシー「水の反映」に出会った時の衝撃は忘れられない。彼は若い頃よく歌う熱い演奏スタ
イルを持っていた様だが、いつしか他者を拒む毅然さと完璧さを備えた演奏へ移行したという。調律への病的なこだわりを
始め、自らの「芸術」が壊れぬよう異様な脅迫観念をもっていたという彼のある種の脆さがこの美しさを生みだしていたの
ならそれは非常に興味深いことだ。

もう一つ挙げたいのが1970年代初頭、メカニックかつ完璧な技巧を備えた若手が現れた際に起こったピアニスト論争の記
述。旧世代のピアニストは音楽に自らを滲ませるのがよくない、ピアニストは作曲家の意思をガラスの様にそのまま伝える
べき存在という意見と、楽譜の記述の先まで深く読み込んだ研究に基づく彼らの演奏こそ若手ピアニストよりも忠実に作曲
家の意思を伝えているという両極端の見方が同一の演奏から産まれる。ここに演奏解釈の難しさがある、と著者は言う。

本著を読み、改めて彼らの演奏を聴くと以前より多くのものが見えてくる。先述レビューの指摘通り既に諸文献で語られた
情報も含まれるが、綴られた文章には紛れも無い著者独自の視点と、大家達への共感と敬意の念が刻まれていると思う。
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