ベルク未亡人によりアルバン・ベルクの名を冠することを世界で唯一認められたカルテットがゲストにペル・アルネ・グロルヴィゲンを迎えて録音したタンゴ集。クラシック楽団によるタンゴの演奏は下手をするとバイオリンが歌い過ぎて脂っこくなってしまう嫌いがあるが、世界でも指折りの演奏力を誇る彼らによるタンゴ解釈は優美さと哀愁に溢れているものの、情緒過多には陥らず非常に知的な印象を与えている。(この楽団のメンバーは全員大学教員でもある。)
ただ、四重奏楽団がメインになっている企画故かバンドネオンが大人しい印象は否めず、特にピアソラの曲では、バンドネオンが四重奏楽団を荒々しく引っ張るように意図された原曲のアイデアが優等生的に纏められた感が強いので、星は削っている。ただ、僕は現代タンゴにピアソラの実験性や荒れ狂う演奏を引き継ぐことを期待してしまうリスナーだが、弦楽四重奏から入って本盤を手に取るに至ったクラシック・リスナーには、このバランス感覚は特に気にならないだろうし、こういうタンゴ解釈というのも一つのスタイルであるということは僕も認める。逆に、本盤の選曲中で最もタンゴから遠いクルト・シュヴェルツィク(オーストリア、8-12曲目)の緊張感は流石である。