そもそもリリー・フランキーなる人がどれだけザ・ビートルズに思い入れがあるのかが全く分らない。思い入れが過剰過ぎて読む方が白けてしまう類いの本もあるが、これは反対に著者が本当にビートルズゆかりの地を訪ねたくて行ったのかさえ不明で、単に企画に乗っただけという印象を拭いきれない。
参考文献に挙げられている著作でそこそこ「お勉強」したことは分るが、しかし内容はそれら研究本の焼き直しでしかなく、それに自身の思い出話を加味しただけに過ぎない。リリー・フランキーという人に全く興味のない(私のような)人間がそうした文章を読まされてもただただ鼻白むだけである。
しかし問題は文章の内容ではない。写真の方である。どの時期に撮られた写真であるかほとんど明記されていないので(別のページの文章中にこっそりと「(この建物は)現在は移転」などと書いてあるだけである)、クレジットのある一部の(ビートルズの写った)写真を除くと、すべて新たに撮影されたものであるかのように読者が誤解しかねない。「Please Please Me」などのアルバム・カバーに用いられたEMI本社はもうだいぶ前に取り壊されているし、リージェント・ストリート沿いにあるBBCパリス・スタジオも今はもうない。
それもそのはずで、これらの写真を提供している福岡耕造という人の数年前の写真集「Somewhere In The Beatles」と全く同じ写真が何枚か用いられており(他にも15年以上前の「ビートルズ心の旅―リバプール、ロンドン」にも同じ写真が使われている)、この写真集は著者が10年以上かけて撮ってきた写真をまとめたものだということである。
だからこの本を読んでロンドンやリヴァプールに行き、収録されている写真の場所を訪ねようとしても、そこには全く別の建物が建っているということが起り得る。
そもそも別の著書に収録されている写真をそのまま流用することについて注記がないこと自体、読者への配慮がなさ過ぎると言っていい。幸い英国では日本と比べ、昔ながらの建物が長年月にわたって保存されていることが多く、いま(2011年春)でもこの本の写真とほとんど変りなく残っている場所も少くない(2011年春まで英国に住んでいて私自身で確認したばかりなので間違いはない)。
「ビートルズへの旅」というのだから、ビートルズゆかりの場所の紹介に徹して欲しかった。物書きなのだかタレントなのだか分らないような著者がロンドンやリヴァプールで記念撮影した写真など見ても、単に白けるだけである。まだ「Somewhere In The Beatles」の方が意図が明確で好感を持てる。もっともこの題名ではどんな内容なのかはっきりせず、そのせいか今では絶版のようだが(中古品であればアマゾンを通して買うことができる)。