樋口顕シリーズの第3作です。作者のあとがきにもあるように物語に深みと厚みのある力作です。3作の中では一番練れた上質な作品に仕上がっています。樋口顕の冷静でしかも人間味のある対処法には感心させられますが、この作品ではヒップホップに人生をかけている藤代タエというバイプレーヤーが非常に魅力的に描かれています。物事にまっすぐに向き合う素直さと真摯な姿勢に惹かれました。島崎英次に対するさりげない言葉に作者の思いがこもっているように思えます。「信じているから」と言うタエの言葉に英次は救われます。「大切なものがある人は自殺しない」と言う言葉からも作者のメッセージが伝わってきます。彼女の登場で物語りは彩を添えながら、意外な方向に展開していきます、人を職業や好きなもので十羽一からげにしてしまうことの危うさに気づかされた気がします。今年は連続テレビ小説の「瞳」でもヒップホップが取り上げられ、ダンスの魅力を知ることができました。先入観にとらわれず、大切なものを見つけて、真直ぐに生きて行きたいものです。この作品は家族小説、社会小説の傑作です。多くの若い人や、人生に疲れた人にも(笑)是非読んでもらいたいと思います。