このアルバムは、ビル・エヴァンスの1950年代から60年代初頭という若き日のピアノ・ソロプレイばかり集めたコンピレーション・アルバムです。トリオの演奏とはまた別の内省的なエヴァンスをたっぷりと聴くことが出来ます。詩的情緒あふれる感性は、色あせることなく、今も多くのジャズ・ファンに愛されています。
収録曲は幾分違いますが、同様の時期のテイクが以前輸入盤で発売されていましたが、限定盤とはいえこのような廉価の国内盤が発売されていることにファンの一人として嬉しく思っています。
4曲目の「ピース・ピース」に代表されるようにリリシズムの極致ともいえる彼の特異な美意識に貫かれたピアノ・スタイルは、他のジャズ・ミュージシャンでは聴くことの出来ない繊細さに満ち溢れているのがよく分かります。素晴らしい音楽ですので、是非聴いて欲しいと願っています。
「ワルツ・フォー・デビイ」「マイ・ロマンス」ともに短い演奏ですが、彼の音楽エッセンスが詰まっています。もっと聴きたくなる演奏でした。
8曲目の「DANNY BOY」は、素晴らしい演奏でした。かくも美しく、そして感傷にふけることなく、深い感動をピアノだけでもたらすこの演奏は、音楽のジャンルを越えて万人に愛されるものだと確信しています。他のアーティストにない感性の煌きが、ピアノの1音、1音から伝わってくるようです。
「アイヴ・ガット・イット・バッド」「サム・アザー・タイム」もよくて何回も繰り返し聴いています。この頃のコンディションが一番良かったのでしょうね。麻薬に犯されていく生涯をみますとそれが残念でたまりません。
なお、収録曲のうち、最初の3曲はモノラルですが、この演奏が残された歴史的価値を考えれば若干の音質の点は気にしなくて良いと思われます。