たとえ非暴力とはいえ抵抗とは、涅槃寂静を宗旨とする仏教には不相応と思われるかも知れません。
しかし、軍事独裁政権下での恐怖と暴力からの解放を望んでのことです。
上座仏教の僧侶は、自己の救済のために出家して修行し、労働生産行為を行わず、布施のみで生活しています。
布施は、受ける僧侶の側よりも布施を施す在家の衆生に功徳をもたらすと信じられています。
僧侶は、政治、社会、経済に関わることをしませんが、布施を行う在家信者のために行動することはあります。
その一つが、1988年の反政府非暴力行進でした。
しかし、軍事独裁政権は、仏教的行為ではないという口実で、激しい弾圧を行いました。
僧院を襲撃し、破壊、暴行、殺戮、逮捕、監禁、強制労働、強制還俗(僧の身分剥奪)
「伏鉢・覆鉢(ふくばち)」
僧侶が、托鉢で使う鉢を伏せて、布施を拒否すること。
軍関係者とその家族に対して、布施、供養、儀式などの宗教的関係を絶つことで、彼らの非仏教的行為を批判したのです。
本書は、歴史的背景についての解説もありますが、怒りを抑えての、
報告書や証言記録、インタビューによって構成され、事実を冷静、客観的に伝えようとしています。
その姿勢には、感動しました。
獄中で、高僧が、仏典や英語の教育を青年たちに施していたことが報告されています。(188頁以下)
ほっとすると同時にかすかな希望を見た思いがしました。