漫然と見ているとよさがまったくわからない作品。
細部まで神経をつかって撮影されているので、
とにかくそれぞれのシーンが美しい。
ペキンパー作品の特長でもある、
主人公たちが荒野をゆくシーンが美しい。
ボブ・ディランの音楽もまたよい(棺桶屋役で出演もしている)。
物語は単純だ。
若干20そこそこのおたずねもの、ビリー・ザ・キッド。
同じくおたずねものであったが、
今は保安官になったパット・ギャレット。
そのギャレットがビリーを追い詰め、射殺するまでの話である。
その流れは史実どおりで、大きな脚色はない。
ペキンパーと言えば「暴力の美学」と称されるように、
派手なアクション・シーンとスロー・モーションが有名だが、
この作品ではそうした娯楽的な要素はほとんどない。
淡々と物語は進み、あっけなく幕が下りる。
だから、漫然と見ていると、何ともつまらない映画だが、
じっくり何度も見ていると、登場人物たちそれぞれの群像が見えてくる。
何度見ても味わい深い作品である。
ペキンパー研究者が音声解説で述べているように、
ギャレットとキッドのあいだには、同性間の恋愛にも似た、
好感と嫌悪が相半ばする複雑な感情がある。
そうした葛藤もふくめて、西部劇の傑作のひとつだ。
なお、邦題は著名なキッドの方を主人公扱いしているが、
原題の「Patt Garrett and Billy The Kid」を見ればわかる通り、
主人公は保安官になったギャレットの方だ。
それを理解しておくと、
映画冒頭で主人公が撃ち殺される
という衝撃の幕開けが印象深くなる。
冒頭シーンだけ、
物語よりもだいぶあとの日付であることに注意されたい。
本パッケージでは、
映画会社のディレクターが公開用に編集した短縮版と、
当初ペキンパーが公開用に編集した長尺バージョン、
その2種類が同梱されている。