七尾旅人の音源がリリースされるたび、いてもたってもいられなくなってしまい、試聴もそこそこ、すぐに買っては何度も聞いてしまう。つまり結構なファンですが、可能な限り冷静にレビュ。
「真剣な音楽は、深刻でなければならない」という呪縛からは、一歩解き放たれたかなという印象。
先行してリリースされていた「Rollin' Rollin'」の軽いフットワークはすばらしい。「どんどん季節は流れて」は、まるで70年代の良質なソウルミュージックを聞いているように心が安らぐ。純粋に楽しい。しめくくりの「私の赤ちゃん」は七尾旅人にしか作れないものだろう。
ただアルバム全体としては、まだまだ重い。暗いのではなく、重い。「I Wanna Be A Rock Star」も「あたりは真っ暗闇」も「1979、東京」もいい曲なんだけども、重い。
「足が地についたものを」という意識がそうさせているのかもしれないが、七尾旅人は、もっと軽くてもいいのではないかと思う。古いもの新しいもの、明るいものも暗いものも、生きたい気持ちも死にたい気持ちも、なにもかもをぐちゃぐちゃに詰め込んでいながらポップに飛べる、それが七尾旅人のすごいところだと思っているのだが、まだなんとも重い感じがする。(「ひきがたりものがたり」あたりから重い方向に進み始めたと思っている。そして「ひきがたりものがたり」は傑作だった)
これは単なる私の好みかもしれないが、七尾旅人は、そろそろ、もっと軽くなる方向を目指してもよいのではないだろうか?「どんどん季節は流れて」に感じられる「軽さ」をもっと追求してもいいのではないだろうか?音を削り、音楽を研ぎ澄ませるだけではなく、軽い音を持ち込むことで軽薄になる。「軽い」音楽にもまだまだ豊穣な実りは残っているだろうし、七尾旅人であれば、その新しい実りを獲得できるはずと思う。
もちろん七尾旅人自身が、飛ぶことではなく、土着性やさらに深く潜ることを志向してるのであれば、仕方ないのだが、もう一度「萌えの歯」の七尾旅人を聞いてみたい。いろんな経験を潜り抜けてきた後の七尾旅人が鳴らす「夜、光る」を聞いてみたい。「検索少年」はあともう一歩。まだまだまだまだ行けるはず。
とはいいながら、すばらしいアルバムです。七尾旅人が、今も変わらず自分自身と音楽に真摯に向かい合っていることだけは間違いないと思います。