「あなた方は毎回最新の音楽的要素を導入しつつも、実験音楽好きのリスナーだけでなく、ポップミュージックリスナーからも愛されてると思いますが、その秘訣は?」と某音楽誌のインタビューで聞かれた時のボビーは「そりゃたんにソングライティングが優れてるんじゃないの?」とぶっきらぼうに答えたという。その場は失笑ムードだったらしいが、完璧に的を射た答えだと思う。今回もそうだがプライマルのアルバムは、いつも1曲目がめちゃくちゃカッコイイ。そのときのアルバムの音楽的要素…ダブ・ハウス・ロックなどこれから始まる音世界を提示しつつ、そのメロディーの立ち方がハンパではないからだ。
レベル・ミュージック、音楽的先鋭性云々というより、ほとんどのファンはボビーのマンガのような長身痩身のルックス、音域は狭いが唯一無比スウィートな声、そしてコード数は少なくても、確実に耳に残るメロディ(というか独特の節回し)など、過激なサウンドの鎧の中に常に存在した本質的なキュートさを愛でていたはず。
今回のアルバムはそうしたバンド本来のスウィートな資質が「スクリーマデリカ」以来に大爆発してる。超初期の名曲「クリスタルクレセント」を彷彿とさせるキラッキラのギターポップ1曲目、シックとニューオーダーが合体したような3曲目やレイト・オブ・ピアーが「スワスティカ・アイズ」をカヴァーしてるような先行シングル2曲目のような2008年型ニューレイヴ風味、ティン・ティンズのようなイージーポップ(最高!)の4曲目、ここ最近のプライマルに一番近い、グルーヴィーなロックに寄り添うキャッチーな歌メロの6曲目と10曲目、cssのラヴ・フォックスとデュエットしてる8曲目もアザといノリで最高。ボーナストラックはかなりいい加減に作って録ったらしいが、これがまたすごくキャッチーで耳に残ってしまうあたり天性のポップ・メーカーとしか言いようがない。
新規のファンが増えるかはともかく(まあデビュー22年目だし…)今までのプライマル好きがひそかに愛でていた「スウィート」なボビー・ギレスピーがこれだけ堪能できれば充分じゃないだろうか。ほとんどのファンにとって末永く付き合える愛聴盤になると思う。