フランスでリュミエール兄弟から「シネマ」が生まれた19世紀末、アメリカではエジソンから「ムービー」が生まれた。本書は2000年代のデジタル化にいたるまでのアメリカ、それもハリウッド映画の仕組みの変遷を、人の動きとお金の動きから歴史的に追求した一級のノンフィクション。「結局、映画では誰がどうやって儲けているのか」を検証してハリウッド映画の経済・社会・政治とのかかわりを精緻かつ大胆に描いています。とてもわかりやすい。
一番わかりやすいのは、第二次世界大戦後に徐々に進んだスタジオシステムの崩壊とは、つまり、製作と配給と上映を仕切っていた映画会社が、テレビ放映やビデオ販売、キャラクター商売など上映以外の収入に頼らざるを得なくなることであり、その分かれ目をハリウッドでは異端だったディズニーの成功に見ていること。ケーブルテレビやネット産業など巨大メディア企業のなかに映画会社が入っていくのも、ソニーなどのハード産業に映画会社が買収されるのも同じ流れでとらえています。劇場からそれ以外へ、商売の論理の転換。数字を挙げた丁寧な解説がとてもわかりやすい。
表現としての映画の歴史については星の数ほどの映画史や文化史があり、また、ドゥルーズ「シネマ1」「シネマ2」という哲学的・理論的な考察もすでに邦訳がありますが、本書の経済的・政治的な歴史記述は大変に貴重です。「売れる映画」の論理を考察しながら、常に「売れない映画」を作りたがる映画人がいることにも目配りしており、そこにも社会学的・心理学的な考察を加えています。100年の歴史を一冊でこなしているのですから単純化の弊害は仕方がありませんが、それを補って余りある説得力は買い。