あまりに録音数が膨大なのと、戦後にヨーロッパに渡って白人相手の「フォーク・ブルーズ」を演じたということから、ブルーズ・ファンに人気のないビッグ・ビル・ブルーンジーであるが、まずはともあれ本作を聴いてみてほしい。本作は彼の実力というものを余すところなく聴き手に伝える内容となっている。
1932年録音の“Bull Cow Blues”は本人のギター1本の弾き語りだが、それ以外の1936年から1941年に録音された曲では、ビアノとベース(一部の曲ではドラムズも)をバックに付けて演奏されている。1936年録音の“Big Bill Blues”ではリロイ・カーの影響が強く感じられる仕上がりだが、時代を経るにしたがって、ギターやピアノのフレーズやリズム・パターンがますますくっきりとして明確なビートが強調されたものとなっていき、全体的なリズムの歯切れも良くなっていく。本人の歌唱も輪郭がシャキッとしていて、音の作りも洗練が進んでおり、全体的な印象としてスッキリとしているので、ブルーズに慣れていない聴き手も取っ付きやすく聴きやすいだろう。もちろん、それは「子供だまし」のような、あるいは水で薄めたような味気ないものというわけではなく、作品の持つ感覚は非常にディープだ。
個人的に最も気に入っているのが、1939年録音の“Baby I Done Got Wise”に“Just A Dream”。ここではピアノとベースにドラムズも付き、完全なバンド・スタイルのブルーズを展開している。もっとドラムズの音を大きくしてビートを強調すれば、そのまま戦後のシカゴ・ブルーズのスタイルそのものと言える音である。これを聴くだけでも、彼の偉大な功績がわかろうというものだ。