現在、自然人類学の分野では、他の自然科学分野と同様に専門化が進んでいる。
この本では、そうした専門化する傾向から一旦原点に帰る、という視点が伺える。
つまり、人類学を今日迄学問研究してきた、さまざまな領域にふりかえり、
霊長類、考古学、発掘の基礎、ほ乳類の研究、古人骨、解剖学、遺伝子、など、もう一度
人類学を生み出して来た関連諸領域の学問をとりあげながら、同時に
世界を驚かした新しい発見の物語を、その学問的な意味を解説している点が、今迄に無かった
人類学のテキストとして輝いて見える。また、その解説はロンドン自然史博物館で働き、第一線で活躍中の
研究者が担当している。これは、いってみれば、世界の人類学会でもトップレベルで活躍中の研究者が、手取り足取りと云う形で、まったく、人類学に興味の無い人々にも理解出来るように、様々な写真を付与して、一つの
テーマごとにじつにじっくりと解説している訳である。この本は、そう言う意味で、専門化しすぎた研究者の人々にも
実勢の研究体制がどういうふうに世界各地で行われているのかを説明し、今後、それらの研究が
どういう方向にむかって世界の研究者に考察されていくのか、その注目先を提示している点は
ある意味で、全世界の研究者に一旦同じ地点に研究の視点を落ち着かせ、そこから、改めて、
どういう方向に向かうべきなのかを教えているのかも知れない。
さらに多くの解説用に用意された写真は、人類学の教科書を学んで来た人々に、
その陰に隠れた、どれほど多くの人々の努力があったかを、歴然と見せており、
想像でしかなかった調査、発掘、鑑定、研究、発表の過程が研究者にも一般人にも多くの教養として
提供されている。いわゆる概説書でありながら、とても親切に多くの写真で解説している点が
おおかたの理解を進めるであろう。