著者は有名なスタイリストらしい。スタイリング前と後の写真がカラーで5名の例が掲載されているので効果がわかりやすいように思えるが、実際は写真撮影のテクニックによる印象操作が大きい。
全ての写真の背景は真っ白で、スタイリング前は、皆さんダークスーツを着ているため、背景とのコントラスト差がありすぎて真っ黒なスーツに見える。しかも、スタイリング前は全て正面からの撮影だ。スタイリング後は全員スタイリング前よりも、明るいスーツになっているので、純白の背景に対するコントラスト差が軽減される上に、斜めからの撮影でスマートに見えるようになっている。
スタイリングについては、まずサイジングはより適切なものになっている。しかし、3名のスーツは、ビジネスとしては疑問符があるライトグレーである。他にも、タウンスーツのように、ボタンの色を生地の色と極端に変えたり、ビジネススーツのルールから外れているものもある。パーソナルカラー診断などもまったく無駄とは思わないが、ビジネススーツの生地が、ミディアム〜ダークなブルーとグレーで柄も、無地、ストライプ、バーズアイくらいの狭い選択肢に対してVゾーンの色でどうまとめていくかがスタイリングの妙なのではあるが、著者はこのような事は無視しているので参考にはならない。
色柄は別にしても、サイジングとフィッティングの区別が付いていないのが文章から明らかである。試しに、Iさんの例を読んでみると、高級感のあるスーツは裏地が大切とか、アイロンによるクセ取りや手縫いの重要性が書かれているのでカスタムメイドのスーツかと思えばメイドトゥメジャー(この本ではパターンオーダーという日本語英語を使っている)である。ではそのスーツがどうか5パージ目の写真を見てみると少しバランスが変であることがわかるだろうか。実は、上の前ボタンの位置が本来のナチュラルウエストより3-4cm高すぎるのである。文中には「高い縫製技術により胸元の美しい立体感は圧巻」と賛美しているが実際は不十分なクセ取りのために、上のボタンの位置を上げることでやや上部に引っ張りあげてごまかしているのである。自然と背中のほうにしわ寄せが来るので、背中のウエスト部分は横じわになってしまっている。トラウザーズ(この本ではパンツ)のほうは「熟練のフィッティング技術を借りて〜スラッとしたした印象に仕上がりました」とかかれているが写真を見ればわかるように、足の形に合わせたクセ取りができないにもかかわらず寸法余裕を少なくしたので、裏側がシワだらけで、とても仕立ての良いスーツには見えない。
他にも、用語の間違った使い方もちらほらあるしとてもお勧めできるような本ではない。