鳩山政権が打ち出した、CO2排出削減の中期目標、90年比マイナス25%というのは、日本のみに経済の停滞をもたらすのではないかとか、家計への大きな負担があるということが、いまだに言われている。しかし、本書を読むと、まったく違ったものが見えてくる。
末吉氏はこれからの低炭素社会を、CO2本位制社会だと言う。というのも、地球温暖化を防止するためには、CO2排出が制約条件になるからだ。そう考えると、読者は2050年CO2排出半減という目標に向かって、社会が舵を切っていくためには、マイナス25%という目標は、むしろ必要なものではなかったのかと思うようになるだろう。
末吉氏は金融の世界から地球温暖化問題に取組みはじめたという経歴の持ち主。したがって、ビジネスマンとして地球温暖化をとらえているという点に注目したい。というのも、低炭素社会でどのようにビジネスが変化するのか、どんなビジネスチャンスが生まれるのか、末吉氏が示した未来に十分な説得力があることの背景になっているからだ。CO2排出はコストであること、あるいは巨大な排出権取引市場が誕生すること、ファイナンスの面でも無視できないこと、など。米国の石炭火力発電所がそうであるように、CO2を大量に排出し続ける産業には将来はないということだ。だからといって、低炭素社会が不便な社会だとは限らない。新しい交通システムやコンパクトシティ、在宅勤務、地産地消の促進、ボランティアを含めた複線的なマルチキャリア、そう考えていくと、むしろゆとりのある社会なのではないかとすら思えてくる。
これからのビジネスマンにとって、必修講義だといえよう。