著者が語る「失敗する人の10の法則(実際には、11)」とは、下記になる。
1、リスクをとるのを止める
2、柔軟性をなくす
3、部下を遠ざける
4、自分は無謬(※)だと考える
5、反則すれすれのところで戦う
6、考えるのに時間を使わない
7、専門家と外部コンサルトを全面的に信頼する
8、官僚組織を愛する
9、一貫性のないメッセージを送る
10、将来を恐れる
11、仕事への熱意、人生への熱意を失う
これだけを見ると、目新しいことは何もないし、もし、内容の乏しい本であれば、この法則が記された目次に目を通すのみで、購入には至らないだろうし、人にも勧めない。
私が、まず惹かれるのは、著者が、失敗の法則に対して、思うところを吹き込んだテープを編集者が起こし、それを本にするために、少し読み易く整えたような文体が読み易く、人生経験豊かなおじさんが、ユーモアを交えて語りかけてくるような親しみやすさにあるが、反面、11の法則に対して論理的な考察を求めるような向きには、物足りないかもしれない。
しかし、たとえば著者が、「もっとも重要」という吹き出しを付けている法則1を読んでみると、著者の先祖がアイルランドから移民し、勇気ある行動で生活を豊かにしてきたことに始まり、コカ・コーラ社の先輩が、会社の発展のためにとった、思い切った決断を紹介するとともに、ゼロックスの失敗を考察することで、賢明にリスクをとることの重要性を説いているが、全ての項目に共通しているのが、著者の経験に裏打ちされた話しだということ。
だからこそ、挙げられた11の法則に対する記述には、ドラッカーやナポレオン・ヒルのような、研究者が突き詰めた真理のようなものとは違う、解りやすい説得力がある。
また、当時、急速にシェアを伸ばしたペプシ社対策での失敗を例に挙げた法則2や、ニュー・コークでの痛々しい失敗を例に語る法則7を筆頭に、単純に読み物としても面白い点も、その助けになっているように思う。
なにより、私が、この本全体から感じる魅力は、著者の「楽観的な合理主義者」とでもいうべき人柄で、人生経験豊かなおじさんが、私たちに語りかけてくれているような暖かみが嬉しかった。
※無謬(むびゅう)とは、「自らの判断や理論に間違いがない」という意。