本書のタイトルに違和感を感じるとする書評が散見されるが、
本書は紛れもなく「差別化=differentiation」についての本であり、
「ビジネスの成功の要は競争力にあり、競争力とはいかに差別化できるかである」(P16)
「ビジネスの世界では差別化がすべてである」(P159)
などの主張からも「差別化」=「ビジネスで一番大切なこと」という趣旨で一貫していると思う。
綿密な市場調査を行って消費者を詳細に分析した上で、
STP(Segmentに分けTargetを絞りPositioningする)などの既存マーケティング手法を駆使し、
競合との「差別化」を目指せば目指すほど、
結果的に消費者には違いが見えない「異質的同質性」の群れになってしまうとする分析は、
非常に説得力があると思う。
身近なところでは携帯電話の機種や料金体系、缶コーヒーや水などの飲料類などが、
商品・サービスの違いが分かりにくい異質的同質性の好例だろう。
では、どうすれば差別化できるのか?
この本題に著者は精緻な理論や具体的手法として明確化するのではなく、
差別化をあくまでも「考え方(姿勢・取組み・人とのかかわり方)」として、
読者自身が消費者の立場から考えることを促している。
3つのアイデア・ブランド(リバース・ブレークアウェー・ホスタイル)も、
差別化について思索を深める枠組みとして類型化されており、
差別化の確立した方程式として提示されているわけではない。
これは著者が差別化についての理論化を放棄したわけでも手を抜いたわけでもなく、
マーケティングの第一線の研究者として、
差別化を鋳型にはめて提示することは不可能であり、
むしろ原点に帰り自らが消費者の立場から考え直すことから差別化が生まれる
という結論に達したからではないだろうか。
成熟社会の差別化について、
改めて深く考える機会とヒントを与えてくれる良書だと思う。