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15 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
フランコ政権下、エリセ20年の呻吟、、、。,
By カディス (広島市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ビクトル・エリセ DVD-BOX - 挑戦/ミツバチのささやき/エル・スール (DVD)
「ミツバチのささやき」寡作で知られるヴィクトル・エリセ監督の長編第一作は検閲を潜りぬけ サンセバスチャン映画祭入賞を果たした。 セリフの少ない寡黙なこの映画は、主役を演じたアナ・トレント抜きでは語れない。 アナ・トレントは映画の中の「少女アナ」に投影され、観客もそれを受け入れて物語は進行する。 彼女は自身として精霊と向き合うのである。 「私はアナ」、フランコ政権の下で抑圧された知識人たちの呻きが、少女アナの精霊たちへの 語りかけとなって昇華する。 撮影当時の様子がエリセをはじめ、周辺の人々によって語られる特典映像は必見。 すっかり美しく成長したアナ・トレントが当時のロケ地をリポートする。 美しい田園風景と少女のまっすぐな視線がこの映画の全てだ。 「エル・スール」 色彩、光と影、音楽との調和、構図、それらの全てが紡ぎ出す美しい映像、 娘によって語られる父の物語は断片的で曖昧さを孕みながらも、 エディプス・コンプレックスもののような大時代的陳腐さはない。 ダウジングの名人で幼い時にはゆるぎない存在だった父、 彼が心の奥深く封印してしまった故郷の記憶、 ある女性との再会を娘が垣間見た時、彼女にとって父は別のものに変貌する。 父との距離は埋まらぬままやがてある結末が訪れ、娘はボストン・バッグに父の思い出を忍ばせ、 彼の故郷である「エル・スール」、南へと旅立つ。 スペイン内戦の影を落とす父の物語は、祖母に付き添う家政婦ミラグロスによって ごく部分的ながら語られる。 政治(内戦)に全も悪もない。勝ったほうが善なのだと、、、。 ミラグロスこそ「祖父と父」との対立を知る人物、祖母とともに「エル・スール」で暮らす彼女が 娘にその全容を語り伝え、娘はやがて父の哀しみのありかをダウジングのように探り当てることだろう。 そんな予感だけを残して映画は終わる。 父の哀しみ、それはエリセ自身の哀しみだ。 父と母と娘、そして「ミツバチ・」にも登場する家政婦ミラグロス、登場人物の構成も 「ミツバチ・」をほぼ踏襲、10年の年月をかけて練り上げられた連作である。 映像作家エリセの20年、それはフランコ政権下におけるスペイン知識人たちの長く昏い呻吟だった。
13 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
沈黙の音―ヴィクトル・エリセの映画,
By わびすけ "わびすけ" (愛知県蒲郡市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ビクトル・エリセ DVD-BOX - 挑戦/ミツバチのささやき/エル・スール (DVD)
沈黙の音―ヴィクトル・エリセの映画ヴィクトル・エリセ(1940〜)は溝口健二の「山椒大夫」を観て、映画一筋に生きる決心をした。1969年、プロデューサー、エリアス・ケレヘタが企画したオムニバス映画「挑戦」の第3話でデビューし、1973年の「ミツバチのささやき」、1983年の「エル・スール」、1992年の「マルメロの陽光」など10年に1作しか撮らない(あるいは撮れない)寡作の映画監督だが、どの作品も映画藝術の奇蹟的傑作で、スペインが世界に誇る至宝である。 「ミツバチのささやき」の原題は、「ミツバチの巣箱の精霊」という意味で、スペイン内戦(1936〜39)後のフランコ独裁時代(フランコは1975年に死去)に制作されたとは思えないような傑作である。これがエリセの長編第1作というのだから…。 この映画は一応ストーリーはあるが、人物同士の対話は極力抑えられ、幼い姉妹と父、母、家族、そして世界との関係が「詩的」に描かれている。映像詩と呼んでもいい。 汽車の音が聞こえ、去っていくシーン。姉妹が遠くの井戸のある一軒家を丘の上から見つめている俯瞰ぎみのロング・ショット。地平線まで何もない荒涼とした風景。オルゴール仕掛けの懐中時計。駅。小さな学校。馬車。公民館前の広場。焚火。 この風景は言うまでもなく、西部劇なのである。西部劇(具体的にはジョン・フォードの映画)の残影がここかしこに散見される。キャメラのルイス・クアドラドのすばらしい仕事だ。音楽のルイス・デ・パブロと音響効果のルイス・カストロもすばらしい。時計の音、汽車の音、靴の音、風の音。沈黙の音(?)。 「エル・スール」は前作「ミツバチのささやき」と同じように、幼い少女の眼を通して、父、母、家族などが語られる。不思議な力を持ち、謎を秘めた父親と家族が少女の視点で語られ、父親との関係のなかで少女が成長していくことも共通している。また、娘にとって父親の謎がスペインの内戦に端を発していることも共通している。 優れた映画作家は、例外なく音楽のことも熟知しているが、エリセもそうだ。前作「ミツバチのささやき」で音楽を担当したルイス・デ・パブロ(1930〜)はすばらしい仕事をしたが、「エル・スール」は作曲家を使わずに、既成の曲だけで作品を撮った。即ち、グラナドスの「スペイン舞曲集」から「アンダルシア」と「オリエンタル」、ラヴェルの弦楽四重奏曲、シューベルトの弦楽五重奏曲、そして「エン・エル・ムンド」、「ラ・クンパルシータ」である。硬軟取り混ぜたその選曲のセンスは抜群である。 ヴィクトル・エリセは声高に話す映画作家ではないが、つつましく、あたたかく、強靭にメッセージを送ることのできる稀有な芸術家である。次の作品はいつ公開されるのだろうか。
23 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ビクトル・エリセはやっぱりすばらしい,
By iem2 (鶴岡市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ビクトル・エリセ DVD-BOX - 挑戦/ミツバチのささやき/エル・スール (DVD)
20年以上前にスクリーンで初めて「ミツバチのささやき」を見たときは、何ともいえない衝撃でした。こんな映画があるんだ、と映画の奥深さにふれた思いでした。その後テレビで放映されて再び見たときに驚いたのは、一つ一つのシーンが本当に鮮烈に自分の中に残っていたことです。フランケンシュタインの映画を見るアナの大きな瞳、遠くまで続く一本道を自転車で下るシーン、線路に耳をつけ遠い響きを聞くシーン、炎の上を飛び越えるシーン、お母さんに髪をとかしてもらうシーン、大きなカップでミルクを飲むシーン。そして、有名なリンゴをあげるシーン・・・あげたらきりがありません。映像の一つ一つ表情の一つ一つがが詩的であり心を打つ、まさしく「映画」といえる作品です。それをDVDとして自分の手元に置ける喜び。復刻してくれてありがとう!
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