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エリセが10年に一本しか映画を撮らないのは決して自身が意図してのことではなく、彼を取り巻く側の諸般の事情で不運にも企画倒れに見舞われることが頻繁だったということがこの本からは分かります。彼自身はその不運に対してかなり強い憤りを抱くこともたびたびだったようです。
映画というものが芸術作品である一方で、多大な資本を注ぎ込まざるをえない娯楽商品でもあるという二面性を持っていて、そのことがエリセのような監督の活躍できる場を狭くしていることを改めて感じさせられました。
また、彼の映画はスペイン性の強いものであるために、日本人の多くの観客にはすんなりと受け入れられにくい性質を持っていると思います。私自身はスペインから入ってエリセにたどりついたので、彼の作品に触れるよりも前に人並み以上にはスペインの歴史や風土に関する知識がありました。ですが、そうではない観客にはエリセの作品はセリフまわしも少なく説明不足ぎみなために了解しづらいものと受け取られることでしょう。
日本市場における彼の作品のこうした弱点をこの本は補ってくれると思います。スペイン内戦の背景や経緯とエリセの作品との連関性について詳述している章は、彼の映画の理解を助ける有効な手立てとなるはずです。この本を一読した後で改めて「ミツバチのささやき」「エル・スール」「マルメロの陽光」の三作品をビデオかDVDで手にすることは意味あることだと思います。
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