戦後左翼系知識人の代表のようにカリカチュアライズされている著者だが、本書の最初は中ソ核武装を受けて分裂し、広島市民の抱える心情や問題から有害なまでに浮きまくる左翼系非核運動の告発から始まる。左翼勢力がダメダメな一方で、着実に実績を挙げていくのがキナ臭い保守系議員なのだが、その保守系勢力も露骨な忠米振りで、原爆投下の陣頭指揮を取った米国軍人に勲一等叙勲をしてしまう。
被爆者達から乖離し利用するだけの「政治」に幻滅した著者は、現地の被爆者達、特に自らも被爆しつつも原爆症という未知の病気と闘う医師達の生の声に沈潜していく。沈潜した結果、どう行動するかということには至っていないという点で、本書はあくまで未完の「ノート」である。その点が気になるので星はひとつ削ったが、逆にどう行動するかというのは読者一人ひとりが自分の立ち位置で考えるべきことでもあるだろう。