内容紹介
タイトルに同書が訴えたい思いがこめられている。ヒロシマの被爆体験を悲惨な現実の押しつけではなく、未来に希望をたくす「愛」で語る。
それこそが被爆60年を過ぎたヒロシマを伝える、あらたな可能性なのだ。
全編、写真と短い文章のみによって構成されている。カメラは、平和公園とその周辺をさまよい、さらに被災者が運ばれ治療も空しくつぎつぎに息絶えて行った似島へと向かう。そこで拾われるスナップは日常のありふれた光景だが、そのアングルは60年前のあの光景にオーバーラップしている。
灼熱の地獄に落とされたこどもたちが水を求めてつぎつぎに飛び込み流されて行った川では、いま幸せそうな母子が日向ぼっこをしている。そこに著者はあの日、生き別れた母子を見る。そして何十万の被爆死した霊たちのことばを拾うのだ。
「生まれてくれて、ありがとう」と。
「ヒロシマ」が親しみやすく、そして深い。中高生にも読んでほしいテキストだ。
中国新聞 2005/12/29
平和公園(広島市中区)などで撮ったスナップ写真と短い文章で構
成する冊子「ヒロシマより愛をひめて」が発刊された。広島市安佐北区のライ
ター堀治喜さん(52)が、普遍的な平和を「思い描く」ことで発進力を高めよう
と被爆六十年を機に仕上げた。
引き取り手のない遺骨が眠る原爆供養塔の写真には「無縁どうしが縁あっ
て」、原爆ドームで記念撮影する女子高生のそばには「『はい、チーズ』より笑
顔が可愛い『はい、ピース』」...。見開き二ページのモノクロ写真二十六枚
に、三--五行の文を添えた。
「おとむらいにいっぱい遊んでよ」。川を流された無数の遺体を思って、本川
沿いの芝生で遊ぶ子どもたちを撮った。その後、河岸で赤ん坊を抱き上げる女性
を見かけて、自転車に乗ったままカメラ付き携帯で切り取った。付けた文は「こ
の川で母子(おやこ)となってまた会えた 生まれてくれてありがとう」...。
堀さんは長野県出身。妻の両親が入市被爆しているとはいえ、原爆について
「表現する資格があるのか」との悩みがあった。被爆者が老い、減る中で、六十
年を機に「僕たちなりに想像していかないと」と思い至り、この数年撮りためた
カットから編んだ。