ドゥルーズのヒューム論としては『経験論と主体性』(河出書房新社)が最も完全な形で書かれたものであります。他に本書と『無人島』(河出書房新社)所収の「ヒューム」があります。『無人島』所収のヒューム論が「関係の外在性」に力点を置いているのに対し本書は連合説と想像力の問題および道徳論に力点があります。岩波文庫『人性論』に典拠を求めながらじっくり読めばドゥルーズがかなり正確かつ鋭意をもってヒューム解釈をしていることがわかりますが論題が上述のごとく限られているせいもあって本書だけでドゥルーズのヒューム論が(あるいはそのエッセンスが)分かるといったものでは全くありません。そして本書と『無人島』とを並べて読んでもドゥルーズのヒューム論の全体像はつかめないのではないかと思われます。短い本なのに一字一句理解して読むにはかなり難解でもあります。
しかし他方ドゥルーズのヒューム論を読むためにはまたは大著である『経験論の主体性』の副読本としては必携すべき一冊だとも言えます。『経験論と主体性』と似た表現が多出しています。
また中盤にヒューム抜粋集がありますがルロワによるフランス語からの訳のせいでかなり意味不明なものになっています。ヒュームの翻訳は日本の岩波文庫などを参照した方が安全です。
また訳者の合田正人氏による解説はヒュームの専門家からもドゥルーズの専門家からも(合田氏はドゥルーズもかなり専門家ですが)かなり暴走している感を持たれるのではないかとも思いますが合田氏の勢いが感じられて好意的に読めます。