ジムの美人インストラクターの織田さんから思いかけない告白を受けた安藤。しかし、彼の
反応は思わしくない。というのも、彼女が安藤の苦手とする超ドS人間にしか見えなかった
からだ…。
自己のセクシュアリティが親しみ深いもののはずなのに、他者のそれは不確かでいて、不気
味なものであるというのを、古谷のマンガはいつも気づかせてくれる。恋愛に猪突猛進しなが
らまるでうまくいかなかった安藤だが、ある日突然、思いもよらぬ方向から自分を性的対象と
した存在に出会う。男の読者からすれば、彼の躊躇は「据え膳くわぬは」的な話になりそうだ
が、よくよく考えてみれば至極真っ当なリアクションのような気もしてくる。
一方この5巻で強烈なインパクトを残していくのは、織田さんに片思いしていたジムのオッサン。
安藤さんは彼に織田さんをめぐっての決闘を申し込まれる。だがなんだろう。このおっさんの他
人との話の通じてなさの絶妙な感じは、今までのギャグマンガにはもちろん、古谷作品のなか
でも新鮮な色を出している。
しかもきわめて唐突なのだ、彼の登場は。古谷作品にはときたまこういう、突然変異のごとく突
如として出現する「コブ」みたいなキャラクターがいる。本当にいきなりやってくるのだ。ストーリー
上ではほとんど関係なく、例えば「あらすじ」を書こうとするとき書きようのないようなキャラだ。例
えばあなたの背中に大きなコブができたと考えてもらいたい。シルエットでわかるくらいのコブだ。
それが三か月だけあなたの背中に乗っかっていて、三か月たったらポロっととれる、そんな感じ。
その3か月だけあなたと関った人なら、あなたがどんなにキャラが濃い人でもきっと他人には「コブ
のある人」と紹介するはずだ。これはいやだろう?いや、話が脱線した。とにかくそんな印象をさっ
そうと彼は残して去っていく。おそらく5巻のMVPは彼だ。そして、岡田君の存在感はますます薄く
なっていく…。